特派員通信 第1号

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「11年前、『一年後に古本屋を開業しよう』と思って、勉強のため全国の本屋を回ってたんです」と佐伯さん。

まずは、御自身が古本屋を開業される直前のエピソードから、佐伯さんの講演は始まった。

・・・11年前、たまたま立ち寄った江戸川区の本屋で、一見無口なその店の店長と意気投合。

開業資金を温存するため本は買わないつもりだったのに、面白くって、いっぱい買ってしまった、と。

そして「 『 鈍行列車 』という本、帰りの電車で読んでボロ泣きしました」という佐伯さん。

その本屋『読書のすすめ』の清水克衛店長や、お店の常連さんたちとの、深く濃い付き合いが始まって、 気がつけば、その年の秋に立ち上げられた、読書普及協会の設立メンバーの1人になっていた。

そして、その少し前には、開業資金の不足を乗り越えて、念願の古本屋開業にこぎつけられた、と。

この日の午前中の総会。

理事長講話で、佐伯さんは「自立と奉仕」という理念を再確認してほしいと語られた。

自立とは、不満を他人にぶつけず『自分の機嫌は自分で取る』人間でいること。

奉仕とは、『まず、人を喜ばせてみよう』と 自分から行動できる人間であること。

「この辺の事は、午後の講演で、実践バージョンのエピソードを交えてお話します」とも予告されていた。

「協会を設立して 清水さんと、『本のくすり』っていう 人生に効く本を紹介するイベントを始めたんです。

毎回、30~40人はお客さん来てましたね」 1年経って清水さんが抜け、佐伯さんがひとりで『本の力』という名で引き継ぎ開催していたものの お客さんは一気に激減して数人になってしまったとか。

「ああ、全部 清水さんの力だったんだなあ、って。

本の内容を棒読みで紹介するだけだったのでおもしろく なかったんでしょうね。

僕がしゃべってる最中に、お客さん同士、携帯でメールやり合ってるくらいでした (笑)」 今、現在の、佐伯さんの「本の力」の面白さを知っている常連メンバーには想像しがたい事だけど 当時、10年前の佐伯さんは、トークが全く受けず、イベントが盛り上がらなくて、かなり悩んでおられたらしい。

「思い余って清水さんに相談したら、『福の神になった少年』って本を黙って紹介されたんです」

・・・その昔、東北の仙台の村にいた ある知的障害児の男の子の物語で、村でバカにされながら育った少年が ある宴会で踊ってみたらウケて、みんなに笑われているにも関わらず、もっと喜ばれたくて 調子にのって 踊り続けて宴会を盛り上げていったというエピソードに

「ああ、これかな・・・と思ったんです」 「自分をよく見せよう、カッコよく見せようとかじゃなくて、相手に喜んでもらうって事だったんですね」 いい話をして尊敬されたいという気持ちが強すぎて、お客さんに楽しんでもらえてなかった、と気づいてからは 「頭の中が真っ白になっても、それをお客さんに告白して、笑ってもらう余裕を持てるくらいになりました(笑)」

それから しばらく「お客さんに楽しんでもらうため、話し方に試行錯誤を重ねられて、 『自分の失敗を隠さない』『むしろネタにして笑ってもらう』御自身のエピソード満載の トークショーになり、 その後も 涙ながらの事件に遭遇しながらも、人気の読書トークイベントとして今に至るまで続いている、と。

聞いていて、いつも思う。佐伯さんは、自分の主義主張を広めようという気持ちを持ってらっしゃらないようだ。

読んだ話や、身の回りの実話を、面白く話して、聴いてる皆さんを笑わせて、愉しい気分にさせて。

結果、皆さんが前向きな気持ちになるように、明るい気持ちで何かを掴めるようにと持って行ってくださる。

ツイッターでも FACEBOOK でも『自己主張』が溢れかえっている世の中だけど、あえて自己主張せずに、 気分や雰囲気の力で人に影響を与える。これって、すごい事だと思う。

心が満たされないとき、他人に『自己主張』してエネルギーをもらいたくなるものだけど。

佐伯さんは それをせず、ひたすら自分が明るく愉しい気分で居られるよう、努力されている。

『自分で自分の機嫌を取る』自立って、そういう事なのか・・・・ 。 「でも・・・ 実は 開業して3年目で 店が潰れそうになったんです (笑)」 とにかく売上を上げるため他人にかまってられない!そんな状況のときに あるお客さんと運命の出会いが。

社会人ラグビーの名門チームで 長らく補欠で試合に出してもらえずにいて、真剣に転職を考えていたM さんを 「初めて来た時、どんより暗いオーラ出してて(笑)、大きな体が とっても小さく見えてました」

ほどなく親しくなった佐伯さんは、「いやホント、彼にかまってる場合じゃなかったんですけど (笑)」 何時間にもわたって、M さんの想いを聴き続け、これはと思う本を薦め、それをM さんが 読んで報告しに来る。

そんな事を何回も何度も 繰り返しているうちに、M さんの気持ちが 前向きになっていくのを感じたそうだ。

「30年間、一冊も本をまともに読んだ事がなかった、っていう彼にとって、 難しい本を 一冊 読み通した事は すごい自信になったんでしょうね」 選手として今までやってなかった事、やりたくなかった事も意欲的に練習した結果、レギュラーに返り咲き、 その年のチームの日本一に貢献。

その後、また試合に出られなくなっても 周りの選手をサポートする事に喜んで専念し、 引退後も、会社に残ってサラリーマンとして 自分に出来る事を一所懸命やりながら、トレーナーの資格をとって 無償で後輩達の面倒を見ていると。

そんなM さんの目標は『全日本チームのワールドカップ優勝』 「日本人はね、人を喜ばせることに幸せを感じるDNA をもってるらしいんですよ」 佐伯さんが改めて紹介してくださった本は、司馬遼太郎の「新史・太閤記(上・下)」(新潮文庫)。

自分も楽しく 周りのみんなも楽しい。豊臣秀吉は 雰囲気づくりの達人だったらしい。

毎回トークイベントの中で、そんな学びの場を設けて下さりながら、『自立と奉仕』の奉仕の部分も背中で見せて下さる。

さて、僕らは。

どんな形で奉仕ができるだろう。

「まずは動いてみるんだよ。」

佐伯さんにそう言われそうだ。

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