書斎の鍵

2015-08-10
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●レビュー

この国に生まれたということは、かけがえのない資産なのだと、喜多川先生は書かれていたが、誰もがとうていその恩恵には気づいていまい、と思われる表情である。
もったいないほどの識字率、そしてそれを支えた文化、感受性をも放棄していないだろうか。

人生を作るのは習慣だという。
言葉の習慣、思考の習慣、感じ方の習慣。
文明を越えた尊い習慣に恵まれた私たちは、それだけでもう、まれにみる資産家だ。

果たして文明の利器により、人類は楽になったのであろうか?
携帯電話の普及により、連絡の付かない時間は皆無となり、家電製品の普及は生活形態の複雑化を招いていないか?
身近な例をとれば、お掃除ロボットを買ったはいいが、それがスムーズに動く部屋を目指して、お掃除セミナーを受けると言うもの。なんだかややこしいのである。

電車の中でも、みなさん、とても忙しそうだ。
寸暇を惜しむトークチェックだろうかゲームだろうかスクリーンを見る目はただごとではない。
私が開こうとしている伝記的エッセイよりは余程急を要するようにお見受けした。

それでも、本はいい、と私は思う。
二つも先のドアから入ってきたおじいさんに気づき席を譲ることができるから。
ドアに片方の肩を預けながら、よし!この本も私の書斎入り決定だ。
そんな思いが、この車両にいる誰よりも明るい表情を連れてくる。

書斎という概念を変えてくれたことに、私は何よりもお礼を言いたい。
お風呂にはいるように、本のシャワーを浴びて、きょうも書斎向けの本を探すのだ。

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