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南米「棄民」政策の実像

2016-07-11
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●レビュー

EUからの離脱をした英国ですが、その一因となったのがEUの「移民政策」です。英国民の多くがEU内での移動の自由が英国への移民を増やし、英国民の雇用を圧迫していると考えているようです。

移民は通常、貧しい国から豊かな国に流れるので、EUのなかで比較的経済が安定している国はみな、移民問題に頭を悩ませており、英国に続いて各国で連鎖的に国民投票が行われ、雪崩式にEUが形骸化する可能性もちらほらと指摘されています。

さて、日本もかつては移民大国でした。日本は中南米にむけてたくさんの移民を排出しました。もちろん、大戦前〜大戦中には満蒙にもたくさんの開拓民を送り込みましたが、これは形としては現地においても日本国に統治されており、移民ではなく「植民」です。中南米については、勧誘・教育・送り出しについては国が主導し(実際に受け持ったのは企業)ましたが、現地については国はほとんど関与していません。

もうひとつ忘れていけないのは、移民政策は戦前だけの話ではなく1970年(昭和45年)まで継続されていたことです。敗戦国の国民が異国の地(しかも、南米と言えど戦勝国です)でいかなる苦難の道を歩んだのか。

問題は国はなぜ「移民」という国策を開始し、継続したのか。日本はなぜ、「貧しい国」に移民を送り出したのか。国はなぜ「国策」を優先し、戦前戦後を通して同じ過ちをし続けたのか。それが「移民」ではなく「棄民」と呼ばれるゆえんです。事前調査もいい加減、教育もいい加減、送り込んだら知らんぷり。それが日本の移民政策です。多くの若者たちが、夢のような新天地と言う甘言に乗せられ、現地の人たちも放棄したような荒野ではじめての農業に挑戦し、極貧のなかで挫折して行きました。また、現地の富裕層に雇用され、奴隷同然の扱いを受けたものも少なくありません。

つい50年前まで、日本が国民に対して何をしていたのか。他国に何をしていたのか。そして、その構造は現在においてはたして修正されたのか。我々はそこをきちんと学び、考え、改めていかなければなりません。棄民という言葉を原子力政策と入れ替えれば、現代社会が見えてきます。

また、あわせて「さよなら日本―絵本作家・八島太郎と光子の亡命」晶文社、「棄民たちの戦場―米軍日系人部隊の悲劇」新潮社を読めば、戦前の米国移民についてその一端をかいま見ることが出来ます。

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